報恩社公式サイト③「地涌」精選

地涌選集

筆者 / 不破 優 

編者 / 北林芳典

二十四章 権力けんりょく欺罔ぎもう

地涌オリジナル風ロゴ

第808号

発行日:1994年11月28日
発行者:日蓮正宗自由通信同盟
創刊日:1991年1月1日

反創価学会の野合組織「四月会」の陰の主役・亀井静香氏は
国家神道の復活すら目論む反「信教の自由」論者である

「四月会」は、一部の自民党国会議員によって構成される「憲法二〇条を考える会」を母体とする。この「四月会」は、来るべき小選挙区制のもとで決定的な影響力を持つ創価学会票に対抗するため、他の宗教票を集める目的で設立されたものである。その野合の軸とされたのは反創価学会であった。

当時、細川連立内閣によって政権の座を追われた自民党は、政権復帰を目指すべく「憲法二〇条を考える会」を中心として、連立内閣誕生の中核となった公明党およびその支持母体である創価学会を攻撃目標とした。公明党および創価学会を「信教の自由」を脅かす存在であると喧伝し、他の宗教団体を煽り「四月会」へと糾合したのである。そのため、「四月会」の母体となった「憲法二〇条を考える会」所属の自民党議員たちは、国会の場などで、

「創価学会と公明党は政教一致だ」

「宗教団体である創価学会が、公明党を支援し選挙活動するのは憲法違反の疑いがある」

などと、反創価学会の宗教団体の歓心を買おうと盛んに批判した。

だが、十月十二日におこなわれた衆議院予算委員会で、大出峻郎内閣法制局長は「政教分離」の原則について、「信教の自由」の保障を目的としたものであり、宗教への国家権力の介入を排除したものである、との政府見解を表明した。

「信教の自由」を保障する憲法二〇条には、

「(1)信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

(2)何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

(3)国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」 

と謳われている。

大出局長は、(1)の「政治上の権力」について、国や自治体の「統治権」に限定されるものであるとの見解を示した。ということは、創価学会が支持する公明党などの政党が、いわゆる“政治的影響力”を持ったとしても、それは「政治上の権力」には当たらないということである。また、同局長は、宗教団体の政治活動についても、

「憲法二一条の『表現の自由』の一環としても宗教団体が政治的な活動をするのは尊重されるべき」

とし、その「政治的な活動」について、

「宗教団体に許されている政治的な活動の中には、選挙運動も含まれる」

との見解を示した。これまた創価学会が公明党を支援するためおこなってきた選挙活動も、なんら問題とされるべきことではないということである。

それでは「創価学会と公明党は政教一致である」などとして批判し、「四月会」の母体となった「憲法二〇条を考える会」の代表である自民党衆議院議員・亀井静香氏は、この「信教の自由」を保障する憲法二〇条について、いったいどのように考えているのであろうか。『自由』(平成六年十一月号)において、ジャーナリストの前原政之氏は、亀井氏について、つぎのように評している。

「靖国神社公式参拝を強力に推進してきた人物である」(『自由』平成六年十一月号)

その裏づけとして前原氏は、中曽根内閣が靖国神社の公式参拝を中止したことに反発して発足した自民党の改憲派政策集団「国家基本問題同志会」の座長を亀井氏が務めてきたことを挙げている。

また、前原氏はこの「国家基本問題同志会」について、

「昭和天皇死去に伴う大嘗祭(皇位継承の最大の儀式)を『国事行為として行うべき』と首相に申し入れるなど、天皇・皇族の結婚・葬儀等に宗教色を付与しようとする主張をくり返してきた」(同)

と記している。さらに、

「亀井氏は、日本神話を義務教育に取り入れるべきだ、などという発言もしばしばしている」(同)

とも記述している。亀井氏が座長を務めてきたこれらの団体や、亀井氏みずからが推進し、主張し、発言していることこそは、前原氏も記しているように「信教の自由」を保障した憲法二〇条に抵触することなのである。

ということは、亀井氏がみずから信ずるところにしたがい、主義主張を貫こうとすれば、「信教の自由」を保障した憲法二〇条は邪魔なものでしかないのである。

公明党や創価学会が「信教の自由」を脅かす存在であるなどと喧伝し、他の宗教団体を煽って「四月会」結成の立役者となった亀井氏の主張こそ、復古主義的な政教一致を目指すものであり、国家神道の復活に道を開くものである。

先述したように、この「四月会」は創価学会票に対抗する宗教票を集める目的で設立されたものであるが、前出の前原氏はもうひとつの狙いを指摘している。

前原氏は、亀井氏の狙いを、

「国家と神道との政教一致による信教の自由の制限」(『自由』平成六年十一月号)

であるとし、

「創価学会・公明党を『政教一致』と非難している連中こそ、国家神道を核とした政教一致体制の再現を狙う勢力の尖兵だということだ」(同)

と批判している。このことは、「四月会」に常任幹事(団体)として名を連ねている宗教団体を見てもうなずける。

「四月会」の常任幹事(団体)のうち、神道政治連盟は言うに及ばず、仏所護念会教団などは、亀井氏らと同じく靖国神社国家護持を強力に推進している。

また、自教団の政治組織であるIIC(インナートリップ・イデオローグ・リサーチセンター)が「四月会」に加盟している霊友会も、戦中、皇室関係の人間を総裁に据え、伊勢神宮参拝などをおこない教団あげて大政翼賛へと積極的に加担した歴史を持っている。

また、常任幹事(団体)ではないが、日蓮正宗は個人会員に二人の坊主を加盟させている。“法主”日顕の許可なくしては何事もおこない得ない宗派であることから、管長である日顕の許可があってのことと判断される。

まして、「四月会」加盟となれば他宗派の者との共同歩調をとるのであるから、このような高度に政治的な策動に日顕の許可を受けていないと考えるほうが不自然であろう。

事実、日蓮正宗はこの「四月会」に加盟している二人の坊主以外にも、龍年光や段勲などを通して裏で亀井氏らとつながり、機関紙などを使って「四月会」を後押ししている。

この日蓮正宗も、戦中、教義を曲げ伊勢神宮遥拝を指示し、宗祖の御書を戦意鼓舞のために悪用し、大政翼賛へと僧俗を駆り立てたのである。

「四月会」は、正式名称を「信教と精神性の尊厳と自由を確立する各界懇話会」としている。しかし、創価学会を「信教の自由」を脅かす存在であるなどとして「四月会」に結集したこれらの教団が、その掲げるところとは真反対に、あろうことか「信教の自由」を脅かそうとしているのである。しかも、自教団の信者を自民党の票田に化してである。

日本の宗教界の思想性のなさが、再び暗黒の時代を招来させる恐れは充分にある。「四月会」が憎悪を核に形成されたものだけになおさらである。

家族友人葬のパイオニア報恩社