報恩社公式サイト③「地涌」精選

地涌選集

筆者 / 不破 優 

編者 / 北林芳典

五章 綺語きご誑惑おうわく

地涌オリジナル風ロゴ

第219号

発行日:1991年8月7日
発行者:日蓮正宗自由通信同盟
創刊日:1991年1月1日

宗門は「通諜」の作成者は戸田会長であると悪宣伝したが
この文書を捏造したのは戦後入信の法華講員だと判明した

本日(平成三年八月七日付)の『創価新報』に、創価学会の谷川佳樹男子部長より日顕上人に対して七月三日に出された質問書が掲載されている。質問書の形式をとってはいるものの、内容は日蓮正宗に対する断固たる謝罪要求である。謝罪要求の背景には、以下のような歴史的事実がある。

戦時中の昭和十八年六月初旬、当時の牧口常三郎創価教育学会会長と戸田城外理事長は、総本山大石寺に呼び出された。両名は総本山において日恭上人、日亨上人立ち会いのもと、渡辺慈海庶務部長より、「『神礼』を一応は受けるように会員に命ずるようにしてはどうか」(戸田城聖著『創価学会の歴史と確信』より引用)との申し渡しをされた。だが創価教育学会側は、謗法容認の御指南を峻拒し下山した。日蓮大聖人のお教えに背くことはできないと判断したためであった。

太平洋戦争中に総本山のとった謗法容認の姿勢は、日蓮正宗の歴史において大きな汚点となった。一方で、信徒団体である創価教育学会は、日蓮大聖人のお教えどおり、謗法厳戒の信仰信条を貫く。結果、牧口会長、戸田理事長以下創価教育学会の主な幹部二十一名が治安維持法違反などで逮捕され、牧口会長は獄中死するに至った。

しかし、創価教育学会の不屈の信仰により、日蓮大聖人の正法正義は守られ、戦後、創価学会によって広宣流布への着実な歩みがなされた。

ところが、戦時中、官憲の弾圧にあっても屈服しなかった牧口、戸田両会長の事跡に、いま宗門はなんとか傷をつけようとしている。牧口、戸田両創価学会会長の輝かしい業績によって、謗法を容認した宗門の屈辱の歴史がきわだつことを恐れているのだ。

本年三月と五月に、日蓮正宗時局協議会資料収集班一班が「『神礼問題』について」、「日蓮正宗と戦争責任」をそれぞれ発表した。その中で、「通諜」なる文書を紹介し、戸田創価教育学会理事長が、昭和十八年当時に神礼を受け取るように組織に徹底することを指示していた――、と記述している。

谷川男子部長は、日蓮正宗時局協議会資料収集班1班が作成した文書は、日蓮正宗の正規の文書であるとし、その宗門の正式文書で「通諜」という後世の偽造文書を、あたかも戸田会長の作成したものであるとしたことは、はなはだしい名誉毀損であるとして日顕上人に謝罪を要求している。

その内容は激越である。

「ここに、『通諜』なる文書をもって学会の歴史を歪曲したことに対し、強く抗議するとともに、宗門から出された両文書に書かれた『通諜』は偽作であること、また、今後は『通諜』を使って学会の歴史をねじ曲げるような論述は一切しないこと、さらに、これまでの文書で戸田会長並びに学会に対し、その名誉を毀損したことに対する謝罪、の三点を明言した『謝罪文』を『大白法』並びに『聖教新聞』に掲載されることを強く求めるものであります」

さらに文末にかけて記された文には、創価学会男子部として、この問題に対して一歩も引かぬ決意がみなぎっている。

「日顕猊下におかれましては、御法務御繁多のところ、まことに恐縮でありますが、ことは正宗信徒の法難史の根幹にかかわることでもあり、是非、十日以内にご回答くださるようお願い申し上げるものであります。

ご回答なき場合は、宗門において、『通諜』が偽造されたものであることを知りながら、学会の歴史を改ざんすることを目的に、これを採用し流布するという悪質な策謀を企図したものであることを認められたものと解釈せざるをえず、甚だ不本意ながら、戸田第二代会長および学会に対する名誉毀損として、断固たる措置をとることを申し添えるものであります」

日蓮正宗を代表する日顕上人は、宗門の正式文書をもって大信者を中傷し、仏意仏勅の団体を誹謗した責任を、いずれ問われることになろう。

この質問書を、これまで創価学会側から出されたいくつかの質問書と同様に宗門側が無視するようなことがあれば、将来に大きな禍根を残すことになるのではあるまいか。

この質問書は七月三日に出されているが、『創価新報』の報ずるところによれば、七月三十一日現在、日顕上人よりの返答はないということだ。しかし、ことは戸田会長におよぶ、創価学会にとってきわめて重要な史実に関することである。創価学会男子部がこのままウヤムヤのうちに済ませるとは、とうてい考えられない。

ことに谷川男子部長の質問のなかで注視されるのは、創価学会側が文書の作成者を特定していることである。質問書には次のように記されている。

「しかしながら、この『通諜』なる文書を客観的に検証すれば、正法を厳然と守り抜いた学会の歴史を改ざんし、学会も宗門と同様の謗法を犯したとの濡れ衣を着せんがための悪質な謀略・捏造文書(偽書)であることは明白であります。

すなわち、まず何よりも、『通諜』なる文書の筆跡は、戸田理事長の筆跡とは似ても似つかないほど全く異なるものであり、明らかに第三者の筆によるものであるということであります。しかも、私どもは、単に戸田理事長の筆跡ではないというだけでなく、その筆跡が、戦後に入信し、戦前の創価教育学会とは何らの関係もない、ある特定の法華講員の筆跡であるとの確実な証拠を入手しております。

このことは、『通諜』なる文書が、戦後に偽造された謀略文書であるということを、見事に証明して余りある事実であります」

日蓮正宗の法主として仏子を守るべき立場にありながら、貪瞋癡の三毒強盛の故に悪鬼入其身の姿を現じ、仏意仏勅の創価学会を傷つけ、広宣流布の大功労者である牧口、戸田両創価学会会長を捏造文書をもって中傷した日顕上人の罪はあまりに重い。徹底して追及し真実を認めさせ謝罪させなければ、牧口、戸田両会長に申し開きができないと考える全国の男子部員は多いのではあるまいか。

家族友人葬のパイオニア報恩社